冷えと熱(寒熱)
冷えと熱の性質について見ていこうと思います。 以前、陰陽論のところで、 「冷えは陰、熱は陽」というのをやったかと思います。
陰には下降・収縮、陽には上昇・発散 の性質があります。 すなわち、 冷えは下降・収縮、熱は上昇・発散 の性質があるということです。
もうちょっと簡単に、
冷えは、下へ・内へ
熱は、 上へ・外へ
となります。
まず、冷えと熱の上下について
たとえば、部屋の中、 冷たい空気は下へ、熱い空気は上へ行きますよね。 それと同じようなことが、身体にも起こります。 下半身は冷えているけど、上半身は熱い。 (足は冷たいけど、頭はのぼせている、とか) このような方、結構いらっしゃいます。
一日中オフィスでデスクワーク、あまり身体を動かさない生活をしていれば、 冷えは身体に入り込み、そして下へ下へたまっていく…。 エアコンが効いた部屋ですごしていれば、なおさらです。
部屋の中の空気、上が熱く、下が冷えている場合、 どうしたらよいでしょうか?
簡単ですね。 上下の空気が対流するようにすればよいのです。 空気の流れを作り、冷えと熱をミックスするのです。
人に対しても同じ。 上半身が熱く、下半身が冷えている場合、 上下の熱と冷えが対流するようにすればよいのです。 部屋の空気の対流にあたるものが、 「気の流れ、血液の流れ」ということです。
ようは、気の流れをよくし、血液の循環をよくすることが大切。 上半身が熱いからといって冷やしすぎると、 その冷えは身体の中へ、下へと入り込み、 身体の冷えと熱のバランスを悪化させてしまうこともあります。
また部屋でいうと、冬は床暖房が結構有効ですよね。 これに相当するのが、足や下半身を温める、ということです。 冷えている部分を温めると、温度差が少なくなり、 身体が安定してきます。
次に、身体の内が冷え、外に熱がたまっている状態
これ、結構やっかいなんです。 ほてりって、こういう状態の人が結構います。 表面に熱がたまっているので身体が熱く感じます。
そこで身体を冷やすと、 もともと冷えには内に向かう性質があるため、冷えは身体の中に入っていきます。 すると内と外の差がますます大きくなり、ほてり感はより強くなってしまうのです。
また冷え症の方、冷えがどんどん内へ入り込んで、 表面が冷えていて、かつ内がもっともっと冷えているというケースもあります。 こうして長年に渡り冷えのかたまりを成長させ、 まるで氷河みたいになってしまうと大変。
寒い時、身体を温めても、表面は温かく感じるけど芯が冷えたまま。 いくら上から何か着ても履いても、冷たい。 お風呂に入っても、なかなか芯まで温まらない。 冷房にあたると最悪!! この冷えのかたまり、簡単には解けてくれません。
身体の内の氷河のような冷えのかたまりを解かすには、 ここに熱を与えることが必要。 ところが深い所にあるため、なかなか届かないのです。
そんな時、鍼灸治療や気功などが有効。 ツボは身体の奥まで通じているポイントでもあるからです。 お灸をして、身体の奥に熱を入れたり、 鍼を打つことで、気の流れを活発にし、 冷えを動かし、温め、解かしていきます。
また、冷えの強い患者さんのお腹に手をあてていると、 表面はさほど冷たくないけど、 深い所を見てみると、氷のような冷たさを感じます。 ここにエネルギー(気)を送り込むのです。
そして本的に冷えのかたまりを解体するには、時間がかかります。 一回お風呂でしっかり温まったからといって、すべて解消するというわけにはいきません。 長年積み重ねてきた冷えのかたまりですから、いたしかたないですよね。
冷えは大汗とともに去る(実例)
ある冷えの強~い患者さん、 とにかく冷え解消に焦点をあてて治療をしていました。 すると毎回毎回、滝のようにドバーっと汗びっしょり。 よくもこんなに汗がかけたものだと本人もびっくり。 そう、冷えは汗と共に出て行くのです。
春夏秋冬、治療で大汗をかき、冷えを出し続けました。 すると、「去年の冬より楽~?」 年々寒さに対して強くなっていったのです。
この患者さん、はじめにいらした時、 冷えだけでなく、基本的な体力も低下していました。 いくら寝ても休んでも疲れがとれないと。
自分のエネルギーが低下していたので、 冷えを追い出すことさえ出来なかったのだと思います。
今ではかなり冷えが改善され、基礎体力もついたと実感しておられます。深~いところの氷河のようにかたまった冷えを解消していくのは、 ある程度の時間がかかります。 もちろん日頃の生活で、身体を冷やさないよう注意も必要。 しかし努力した分、確実に身体が楽になり、健康になります!
冷えと熱、どちらも必要な要素で、身体の中でのバランスが大切。 季節や環境・自分の体質・状態等に合わせて上手にコントロールできるといいですね。